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ファイティングファンタジーゲームブック日本未訳作品の翻訳活動
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11月25日のゲームマーケット2018秋は

E38「MIZARD BOOKS」

での参加となります。新刊は…
お待たせしました。

「第三次死の罠の地下迷宮 Deathtrap Dungeon 3」

ついに完成です! 本当に長らくお待たせいたしました。翻訳が終わり、これから印刷と製本にかかります。
「え? 死の罠の地下迷宮に第三次とかあったの?」
という疑問を多くの方が抱かれる事でしょう。しかし、あったのです。「死のワナの地下迷宮 Deathtrap Dungeon」「迷宮探検競技 Trial of Chanpions」「死の軍団 Armies of Death」とは別の新たなファング地下迷宮競技の本が! 長らくファイティングファンタジーゲームブックに飢えた読者の渇を癒してくれる、そんな本となる事は間違いないでしょう。もうしばらくお待ち下さい。
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英国のファイティングファンタジー本家公式サイトに告知がありましたので、こちらでも拡散いたします。
パフィンブックス時代の初代FFシリーズで最も多くの作品を書き上げた作家であるキース・マーティン氏が亡くなられたそうです。以下にFF本家の記事を翻訳して掲載しておきます。素人の訳なので誤訳があったら御容赦下さい。

https://officialfightingfantasy.blogspot.com/2018/11/carl-sargent-1952-2018.html
Monday, 12 November 2018

カール・サージェント(1952-2018)
多くの作品を残したRPGライター、作家、超心理学者であるカール・サージェント氏が亡くなったという、大変残念なニュースを聞きました。

カール氏は1988年から1995年の間に「魂奪鬼 Stealer of Souls」「吸血鬼の魔城 Vault of the Vampire」「混沌の支配者 Master of Chaos」「破壊の塔 Tower of Destruction」「亡者島 Island of the Undead」「ナイトドラゴン Night Dragon」「ザゴールの伝説 Legend of Zagor」「吸血鬼の復讐 Revenge of the Vampire」といったシリーズ7作のゲームブックを書き上げた作家キース・マーティンとして、世界各地のファイティングファンタジーファンに知られてきました。

一方で、イアン・リビングストン氏と合作した全4巻の短編小説(ザゴールの伝説※の主人公3人を活かして主役にした「炎の嵐 Firestorm」「闇の玉座 Darkthrone」「髑髏岩 Skullcrag」「魔王 Demonlord」)においては彼の本名で登場しました。

※イアン・リビングストン氏によってデザインされ、パーカーブラザーズ社によって発表されたボードゲームを元にした。

タイタンの世界がカール氏の貢献なしには大変狭い世界だったように、彼の仕事によってグレイホーク、ウォーハンマー、シャドウラン、アースドーンの世界は豊かになったのです。

そして我々は今夜、ハイドリッヒ城の倉庫から取り出した素晴らしいモルトヴァニア産赤ワインで彼の思い出と共に乾杯し、この辛い時の中にある彼の友人と家族に思いをはせるでしょう。


カール・サージェントの記憶 1952-2018


マーティン氏の最初のFFゲームブックはパフィンブックス版の第34巻「魂奪鬼」で、まさに社会思想社による日本版FF最終巻となった33巻「天空要塞アーロック Sky Lord」の次でした。ちょうど翻訳される前の巻で打ち切られてしまった為、ついに日本では公式翻訳のないFF作家の一人となってしまった訳です。
マーティン氏のゲームブックは迷宮探検物が得意だった事と、終盤のボス格の敵に備えてそれらを弱体化または主人公を強化するアイテムや魔法を集めて回る展開となっているのが一大特色と言えるでしょう。ただ、それでも戦闘バランスがややきつく、技術点10以上推奨の本がほとんどでしたが。それでも戦闘バランスが完全に破綻した後期リビングストン作品よりは比較的公正だったと言えるでしょう。中でもやはり最高傑作は「ナイトドラゴン」と「ザゴールの伝説」ではないでしょうか。ジャクソン作品やリビングストン作品がクリアルートのガチガチに限定された「ルート探しアドベンチャー」であるなら、マーティン作品は「戦闘を重視した本来的なロールプレイング」だったと思います。マーティン作品に即死が少ないのもそうした作風から来る必然であったでしょう。

当サークルもこれまでマーティン作品を訳してきて、未刊の作品も残り少なくなってきました。「破壊の塔」と「吸血鬼の復讐」のバグの多さに悩まされたのも、今となっては懐かしい思い出です。後期パフィンシリーズで小説含めてあれだけの数を残し、この人がFFに残した功績は大変大きな物があります。後のジョナサン・グリーン氏も大きな影響を受けました。謹んで冥福を祈りたく思います。

なお、マーティン作品の一つである「混沌の支配者」はすでに翻訳を終えており、近いうちにお目に掛けられると思います。御期待下さい!
イアン・リビングストン氏のツイッターで興味深いやり取りがありました。


https://twitter.com/edreilly2/status/1029058379182956544
ed reilly
‏ @edreilly2
返信先: @ian_livingstoneさん
is it  true that Steve is writing a new FF book  ?
10:33 - 2018年8月13日
(スティーブが新しいFFの本を書いているというのは本当ですか?)


https://twitter.com/ian_livingstone/status/1029093386672844802
Ian Livingstone
‏ @ian_livingstone
So he tells me...:)
12:52 - 2018年8月13日
(そう彼が私に言いました)



ある方の問いにリツイートで答えた発言ですが、これは注目に値するでしょう。「ゲームブック卒業宣言」したはずのジャクソン氏、ウン十年ぶりの新作が現行スカラスティック社版FFで来年辺り出るかもしれません。相方のリビングストン氏や新規参入作家のチャーリー・ヒグソン氏らに触発されて、ジャクソン氏も心を動かされたか?
SNS上におけるイギリスのファン達の話など総合してみると、話の出所は最近開かれた「edbookfest」というイベントでの対談で出た話のようです。
いずれにせよ、期待して待ちましょう。

それと長らくお待たせして申し訳ありませんでしたが、当サークルの通販も今月中に再開予定です。「死霊王の砦」と新刊「第三次死の罠の地下迷宮」もその時にスタートしますので、御期待下さい!


スカラスティック版FFゲームブック第12巻 書下ろし新作
「死の門扉 The Gates of Death」
著者:チャーリー・ヒグソン Charlie Higson
表紙イラスト:ロバート・M・ボール Robert M Ball
本文挿絵:ヴラド・クリザン Vlado Krizan
地図イラスト:レオ・ハータス Leo Hartas
作品舞台地域:西の海、アランシア るつぼ諸島、ポートブラックサンド、シルバートン、サラモニス、トロール牙峠、青銅平原、隠形都市
項目数:470

本書の主人公(読者)は、るつぼ諸島という島で「守護者」と呼ばれる寺院に仕える侍者です。西の海の南方にあるこの島では「守護者」達による治療薬の研究と製造が行われてきました。この島を訪れた者は誰も、石で出来た巨大なるつぼによる薬の製造を見る事になり、それで島名の由来も知る事になるでしょう。
ある日、アランシアから急な報せが来ました。アランシアでは今、「悪魔病」という伝染病が急速に広まっているというのです。この病に感染した者は恐ろしい悪魔じみた化物に姿が変わり、周りにいる人々を襲いだすというのです。襲われた者も同じ病に感染して悪魔に姿を変え、爆発的に犠牲者を増やしていきます。このままではアランシア全土が悪魔病に覆われ、悪魔の住む大陸になり果ててしまうでしょう。そればかりか、アランシアのみならずタイタン世界全てがそうなるかもしれません。
それでも悪魔病には治療法がありました。るつぼ諸島で作られる「煙油」と呼ばれる、特殊な薬草を抽出して作った薬煙を浴びれば元の姿に戻れるのです。しかしながら「煙油」はそんなに多く備蓄されている訳ではありません。アランシアの広い地域に流行した感染者全てを治療するにはとても足りないのです。この少ない量の「煙油」でアランシアを救う道は一つ。アランシアのどこかにあると伝えられる大地の女神スロフの寺院へこれを持って行き、そこの女教皇の魔力で薬の力を増大・拡散してもらう事でした。早速「守護者」達は用意した「煙油」を船に積んでアランシアへ渡り、スロフ寺院を目指す旅に出発しました。主人公の侍者は師であるトビン修道士の補佐としてこの船に乗り込みます。まずは秩序ある港ケインレシュ・マへ上陸し、そこの学者達からスロフの寺院とそれが所在する見えざる隠形都市の情報を得る事。が、しかし…。
「守護者」の乗る船は激しい嵐に見舞われて漂流し、主人公とトビン修道士を除く仲間達は全て死んでしまいます。船が難破して、残った手持ちの「煙油」も10個のみ! そして主人公達が流れ着いた場所は秩序あるケインレシュ・マではなく、盗賊と悪人達の巣窟ポートブラックサンドだったのです…。


「死の門扉」はこのような背景ストーリーで始まります。アランシアで爆発的に感染者を増やしている悪魔病を根絶する為に、その治療薬を隠形都市にあるスロフの寺院へ持っていく事。そしてこの病気の発生源は一体何なのか?

冒険はいきなり危険な町ポートブラックサンドで始まり、その序盤の選択次第でかなり先の進め方が変わってきます。一つは善の大魔法使いニコデマスの助力を得て旅立つルート。もう一つは何とアズール卿の面前に連れて来られて、冒険に出るよう強いられるルート! プレイヤーがアズール卿の御前に連れて来られるというのはシリーズでも初めての展開であり、これだけでもストーリー的にかなりの見せ場でありましょう。
そして本作は旅の範囲が結構広いというのも特徴です。項目数が470もある事から分かるように、結構なボリュームです。ポートブラックサンドを出てシルバートンに泊まり、「バルサスの要塞」や「トロール牙峠戦争」にも登場した名君サラモン王の統治するサラモニスへ。ああ、しかしそのサラモニスとその王までもがあのような惨状になっていようとは! サラモニスを命がけで突破し、隠形都市の手がかりを求めてトロール牙峠へ。そして物語は災厄の元凶である闇の女王にして悪魔の母と呼ばれるウラカーとの最終決戦へと続いて行きます。

本作をプレイして感じるのは、剣と魔法のファンタジーでありながらお話の展開が現代ゾンビもの(感染ものまたはパンデミックものアドベンチャー)に非常に近いという事でしょう。感染した者は凶悪な悪魔になってしまうという悪魔病が蔓延し、主人公はこれを避けつつ、時には戦いながら難関を乗り越えていかねばなりません。主人公やその同行者がある意味で単純な死よりも恐ろしい「感染」の恐怖にさらされながら進んでいくのは、まさに現代ゾンビものそのものです。ただしそこは剣と魔法のファンタジーで、主人公には悪魔病を治療する手段があり、敵として出現した感染者を戦う事なく「煙油」で人間に戻してやる事も可能です。ただしその薬には限りがあり、出会った全ての感染者に用いる事は出来ません。「煙油」を最低一つはスロフ寺院へ持って行かねばならないのですから。数に限りのある「煙油」を道中のどこで使うべきか、それが本作攻略の鍵でもあります。
シリーズ30周年記念作である「ゾンビの血」は現代ルーマニアの古城を舞台としたアドベンチャーゲームでしたが、リビングストン氏によると当初は従来通りのタイタン世界を舞台にしたゾンビものとして構想したと語っていました。最終的には現代を舞台にしたゲームになった訳ですが、奇しくも「ゾンビの血」の当初構想だった「タイタンゾンビもの」は本作でチャーリー・ヒグソン氏が書き上げる事になった訳です。ヒグソン氏とリビングストン氏の交友の深さを考えても、これは決して偶然ではないでしょう。

470項目というボリュームと見所の多いストーリー、場面転換と起伏の多いゲーム展開、感染ものと数に限りのある治療薬というアイデアなど、本作は久しぶりの新作として相応しい良作と言えるでしょう。長らく新作を待った甲斐はありました。今から翻訳のし甲斐がある本で、なるばく早い時期にお届けしたいと思います。

一方でいくつかの欠点もあります。この本で特に多かった問題点として、一度行った行動や場所移動の繰り返しに対する処理がいい加減だという点が挙げられます。例えばいくつかのアイテムや扉を発見した場面で、それらを調べたい場合はそれぞれ所定の項目へ行って確かめるという状況があったとしましょう。ところがここの文章で「もしまだなら何々を調べよ」という記述が欠けている場合が非常に多い。このままだと何度でもアイテムを取ったり行った事のある場所を調べたり出来てしまうという不具合が生じてしまう訳です。特にゲーム前半にあるサラモニスの探索では町の各エリアが双方向移動可能になっているものの、「もし以前にここに来た事があるなら何も見つからない」という類の記述がなく、何度でもアイテムや金が入手出来てしまうように解釈される危険があるでしょう。これは大変な手抜かりです。同様にこのゲームでは時間や場所を遡って以前のシーンに戻れるアイテムや状況(ソーサリー4巻のZEDの魔法や、「黒き血脈の予言」のラスト直前で選択次第では最初の項目に戻されるようなもの)があるのですが、この際にも持っている金やアイテムをどう処理するのか指示されていない場合が多い。アイデアは良かったのですが、それに伴う面倒な指示や処理の仕方が非常に甘かったと言えます。これはゲームブックを書きなれていない人ゆえのミスでしょうか。

さらにもう一つの欠点として、本書は美術面でかなり損をしている本ではないかとも思います。これは著者ではなく絵描きとそれを起用した編集側の問題でしょう。
まず表紙の問題。スカラスティック版FFの表紙はいずれもロバート・ボール氏というイラストレーターが新たに書き下ろしてきました。ボール氏の画風はいわゆるカートゥーン風で、かつてのパフィンブックス版やウィザードブックス版の各表紙ような精密なリアル系とは大分違っています。この起用はスカラスティック社が児童向けをメインにした出版社という事にも原因があるのでしょう。そうした年齢層を読者に想定してボール氏のような絵描きを起用したのではないか。ただし昔とは大きく違った画風とは言え、ボール氏の表紙絵は一応許容範囲だと思います。問題は本書(に限らずスカラスティック版7巻から12巻全ての)表紙の装丁です。冒頭で本書表紙図を転載しましたが、表紙の中央に小さな丸いエリアがあってそこに主要敵キャラ(ウラカー)の顔が出ているだけ。1-6巻の表紙は同じくボール氏の絵が1頁フルに描かれていたのに、これはちょっとあんまりなのではないか。なんでこんな貧弱でみすぼらしいデザインになっているのか。そもそもボール氏は本書含む7-12巻の表紙原画もキャラクターの顔部分だけでなく1頁フルの絵として描いています(それらのいくつかはボール氏当人の公式サイトでも公開されている)。なのに、何でフルに描かれた絵の一部分だけを切り取って載せるようなデザインにしたのか理解出来ません。以下は英国のファンが自分で(1-6巻風に)合成して作った本作の表紙ですが、これの方がはるかに良かったでしょう。



表紙の装丁以上に問題なのは本文挿絵です。これははっきり言ってファイティングファンタジーの作風には合いません。スカラスティック版FF再刊本の本文挿絵は旧版のものを使わず、全てヴラド・クリザン氏というイラストレーターによる新規書き下ろしとなりました。しかしながらこれは大失敗と言わざるを得ません。クリザン氏は元々SF畑の、それも風景画をどちらかと言うとメインにしてきた画家で、剣と魔法のファンタジー世界を描くには全く画風が合っていないのです。しかもぼかしによる遠近効果を多用する画風という事もあり、これまでクリザン氏が描いたFFの挿絵もグレースケールによる濃淡で色や影を描写するやり方でした。ウィザードブックスまでのFFゲームブック挿絵が基本的に白黒二階調で描かれて来たのとは大きく異なります。しかしながらスカラスティック版FFの挿絵は実際に本を読んでみると酷い見栄えで、ペーパーバックのあまり良くない印刷品質ではこのグレースケール濃淡が十分に再現されず、濃淡の差の微妙な部分が見分けられなかったり、濃い灰色がただの黒ベタにしか見えなかったりという惨憺たるものでした。おそらく元の原画データをコンピューターのモニターで見たり、もっと高品質な紙と印刷レベルで刷ればきれいに出るのかもしれません。しかしながらそうした高品位印刷方式ではなかった上に、描いたクリザン氏もおそらくこうしたペーパーバック印刷に合わせたグレースケールで描くのに慣れていなかったのではないでしょうか。コンピューター画面上できれいに出た色やグレーのレベルがそのまま紙に出ると油断したのかもしれません。同人誌の原稿をコンピューターでやった時などにもよくある事です。こうした問題は7-12巻の挿絵でも同様で、以前の失敗から何も学ばず描いたのは明白でしょう。せめて濃淡差が潰れずにある程度しっかり見分けられるような灰色使いを考えて塗って欲しかったものです。
いずれにせよ作品のイメージと挿絵の画風が根本的に合わない所から来る違和感ばかりはどうしようもありません。本人的にはがんばったのかもしれませんが、やはりクリザン氏によるFFの挿絵はこれで打ち止めにして欲しいというのが正直な所です。

「死の門扉」のワンシーン

ただしクリザン氏の名誉の為に言うならば、6巻「危難の旅路」と12巻「死の門扉」(つまりいずれも書き下ろし新作)の挿絵が他10冊のスカラスティック版FFに比べればいくらかマシに描かれているのは確かでしょう。これは旧作の復刊である10冊ではイラストを旧作のイメージに忠実に描かされているからです。つまりイラストレーターのオリジナリティを発揮出来る条件になかった。どうもヴラド・クリザン氏という絵描きは自分独自のオリジナリティを発揮出来る環境と条件にないと良い絵が描けないタイプなのかもしれません。特に「サイボーグを倒せ」の挿絵は、クリザン氏がモノクロ二階調のアメコミ画風を苦手としていた事もあって酷いものでした。さらに「モンスター誕生」のイラストは旧作の挿絵が持っていた意味(イラスト自体がゲームのヒントになっている時がある)を再現していないという、それ以上の最悪振りです。この辺りの話はまた別項で論じてみたいとも思います。


特に最悪だったクリザン氏による「モンスター誕生」のサイ男の絵。旧版では絵自体にゲームのヒントが隠されていたのに、クリザン氏の絵ではそれがなくなってしまっていた。

挿絵を新しく描かせるのは良い。新刊が少ないばかりか、再刊分も旧来のバグなどを修正せず手抜き復刊する(せめて「地獄の館」は短編の雑誌版を同時収録して完全版として欲しかった)とあれば、せめて絵だけでも新しくしてくれた方が見所があるでしょう。でもなぜにクリザン氏だったのか。マーティン・マッケンナ氏(「闇の短剣」以降「狼男の雄叫び」「火吹山ふたたび」など、言わずと知れた後期FFを代表する絵描き)じゃ駄目だったの? ジェイソン・レノックス氏(「モンスター事典2」の新規分イラスト担当者)じゃいけなかったの? ケヴィン・クロズリー氏(「ゾンビの血」挿絵担当。他に近年のジョナサン・グリーン作品の挿絵も)という選択肢はなかったの? 他にももっと良い選択肢はあったでしょうに。かつてFFが人気を博したのは内容はもちろんの事、表紙や挿絵といった美術面が優れていた事も決して無視出来ません。今のスカラスティック版はそうしたかつての長所が台無しになっているのではないでしょうか。せめてそれぐらいは今後何とかして欲しいものです。

「ゲーム部分よりも美術面で問題」
本書を一言で言い表すとこういう事になるのではないでしょうか。美術面のまずさが足を引っ張ったと思います。でもそれにさえ目をつぶれば、純粋なアドベンチャーゲーム部分だけを見れば十分な良作であったと評価出来るでしょう。ヒグソン氏には今作以降もまたFFゲームブックを書いて欲しいと思わせるだけの作品であった事は間違いありません。

この「死の門扉」という本は我々に一つの教訓を与えてくれます。それはシリーズもの、ゲームでもドラマでも映画でもアニメでも何でも、とりわけ長期に亘ってシリーズが続く作品であるほど、「新しい血」の導入が必要であるという事でしょう。今回FFゲームブックにチャーリー・ヒグソン氏という新作家が参入し、その作品の出来栄えを見れば一目瞭然です。長らく新作家が登場せず表紙だけ変えた復刊が主だったFFゲームブックにもささやかな希望が見えた事は喜ばしい事でしょう。
同じ「FF一門」でも、TRPG部門であるアドバンストファイティングファンタジーについては新たなライターや編纂者が登場し、ルール改定された第2版の登場や「モンスター事典2」「タイタン本草書 Titan Herbal」といったルールブックや設定資料集がいくつも刊行(ただしその多くは出版費用をクラウドファンディングで公募するなど、決して元手が潤沢な訳ではないが)されました。これらを実現させたアリオンゲームズ社のグレアム・ボトリー氏やファンから「プロ成り」したアンドリュー・ライト氏のように有能なライター達の参入や活発な活動は賞賛に値しましょう。これら「新しい血」の導入がAFF2を甦らせた訳です。AFF2は日本でも最近グループSNEによって正式に翻訳出版されるに至りましたが、それもまた「新しい血」を得て復活した必然的結果であったでしょう。これが「同門」たるゲームブック部門に示唆する所は大きいと言えます。
ヒグソン氏に加えてさらなる新たな「血」がFFゲームブックにも「輸血」されるのか(それには厳しいと言われるFFゲームブック執筆の契約条件も問題になるでしょうが)。今後とも注目される所であり、それが成功と発展の鍵となる事は間違いありません。もちろん何でも「新しい血」を入れれば良いというものでもないでしょう。血液型の合わない血を輸血したらかえって大変な事になる訳ですから。「血液型の合う新しい血」が果たして今後ともファイティングファンタジー一門のゲームブック部門にも適切に導入されるでしょうか?
イギリスの本家FFゲームブックが2017年よりまた出版社を変えて再刊された事は前回述べました。新しい出版社はスカラスティック社(Scholastic BOOKS)と言い、イギリスでは児童書分野で最大手の出版社であり、日本にも支社があります。

2017年8月から9月にかけてこのスカラスティック版FFは6冊刊行されました(第1期)。このうち1-5巻は旧作の再刊で、6巻が目玉と言うべき書下ろし新作です。

スカラスティック社版ファイティングファンタジーゲームブックリスト
第1期
1)「火吹山の魔法使い The Warlock of Firetop Mountain」
スティーブ・ジャクソン&イアン・リビングストン著
2)「盗賊都市 City of Thieves」
イアン・リビングストン著
3)「バルサスの要塞 The Citadel of Chaos」
スティーブ・ジャクソン 著
4)「運命の森 The Forest of Doom」
イアン・リビングストン著
5)「地獄の館 House of Hell」
スティーブ・ジャクソン 著
6)「危難の旅路 The Port of Peril」
イアン・リビングストン著

表紙イラスト全て ロバート・M・ボール(ただし6巻の著者サイン入り限定版のみイアン・マッケイが担当)
本文挿絵全て ヴラド・クリザン
地図イラスト レオ・ハータス(5巻除く)

これに続き、2018年4月初頭に6‐12巻の第2期が刊行されました。日本でもアマゾンなどを通じて購入されたファンもおられると思います。今回の第2期6冊のうち5冊が旧作の再刊で、12巻が目玉の書下ろし新作でした。リストは以下になります。

第2期
7)「死の罠の地下迷宮 Deathtrap Dungeon」
イアン・リビングストン著
8)「トカゲ王の島 Island of the Lizard King」
イアン・リビングストン著
9)「サイボーグを倒せ Appointment with F.E.A.R.」
スティーブ・ジャクソン 著
10)「モンスター誕生 Creature of Havoc」
スティーブ・ジャクソン 著
11)「ソーサリー1 魔法使いの丘(シャムタンティの丘を越えて) The Shamutanti Hills」
スティーブ・ジャクソン 著
12)「死の門扉 The Gates of Death」
チャーリー・ヒグソン著

表紙イラスト全て ロバート・M・ボール
本文挿絵全て ヴラド・クリザン
地図イラスト レオ・ハータス(9、11巻除く)

第2期でも注目すべきはやはり書下ろし新作である第12巻「死の門扉 The Gates of Death」でしょう。昨年以来の新刊、それもシリーズ初参入の作家による書下ろしと来ればやらない訳にはいきません。著者のチャーリー・ヒグソン氏は日本ではあまり知名度がありませんが、イギリス本国ではコメディアン兼放送作家として有名であり、小説でも007ジェームズ・ボンドの少年時代を描いた「ヤング・ボンド」シリーズがヒットした人気作家で、実力・実績面でも申し分のない人です。ヒグソン氏はリビングストン氏と以前から交友が深かったそうで、FFへの参入もそうした縁がきっかけだったそうです。
ただ、新作と言っても本が出るまでは正直不安がありました。他ならぬ先行作の「危難の旅路 The Port of Peril」が、アドベンチャーゲームとしてあまり出来が良いとは言い難かった為です。はっきり言ってリビングストン氏の前作にしてシリーズ30周年記念作である「ゾンビの血 Blood of the Zombies」の方が出来が良かった。「危難の旅路」は実質35周年作にあたるのですが、内容的にはかなり見劣りします。「危難の旅路」は「盗賊都市」の続編として、復活したザンバーボーン退治を冒険の最終目的に据え、アランシアの善の魔法使いとして双璧を成すヤズトロモとニコデマスを「共演」させるといったストーリー的な見せ場はあるのですが、いかんせん少しでも本筋から離れた行動をしたらすぐに即死という、アドベンチャーゲームとしてはかなり理不尽な展開になっていました。リビングストン作品の悪い部分が寄せ集められた作風とでも言いましょうか。まあ、翻訳はすでに終わっているので、近いうちにお読みいただけると思います。良い意味でも悪い意味でも読んで損はありません。

では、今回の「死の門扉」はどうなのでしょうか? 
筆者も早速取り寄せて読んでみたのですが、なかなかどうして、これは大した本ですよ。面白いです! ヒグソン氏はFFはもちろん、ゲームブックの執筆自体も初挑戦と思われるのですが、それにしては出来の良いものでした。日本のファンにもぜひプレイして欲しい佳作である事は間違いありません。

ではこの「死の門扉」というゲームブックの内容はいかなるものなのでしょうか?

(続く)
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